玄関から上がる際、足元にそろえてあったのは、スリッパではなく布製の草履。足の裏にフィットし、履き心地がいい。名古屋市守山区の手編み教室講師・多崎恵美子さん(66)宅では、不用になったTシャツを使い、室内用の草履を手作りしている。
多崎さんが布草履を作り始めたのは15年ほど前。帽子や衣類などの手芸を教える仕事柄、布の切れ端を持て余していた。使い道を考えていた時、雑誌で布草履を知り、女学校時代にわら草履を編んでいたという知人に作り方を教わった。
まず、荷造り用のロープで草履の「骨組み」を作る。Tシャツをひも状に裂いたものを、骨組みに通して編んでいく。わら草履を作るのと基本的に同じ手法で、小学生でも1時間半ほどで作れるという。Tシャツ2枚で草履1足ができる。
「昔から多くの家庭で作られていたわら草履を現代風によみがえらせたわけです」。色々な布を試したが、Tシャツは伸縮性があり、裂いても切り口がほつれないので作りやすい。カラフルだから色の組み合わせも楽しめる。底が柔らかいので、歩く音も静かだ。
多崎さん宅では、室内用のマットや襟巻きもTシャツを裂いて作っている。Tシャツは綿製が多いが、綿そのものは輸入頼みだ。再利用には「多くの燃料を使って海外から運んだものを使い捨てにするのは良くない」という思いもこもる。
4年前から、手編み教室とは別に、市の講座でTシャツによる草履作りを教えている。モノがあふれる時代なのに、毎回定員を上回る応募があるのが励みだ。「スリッパより階段を上り下りしやすいと、お年寄りにも喜ばれています」
(2009年4月6日 読売新聞)

カラフルなぞうりは、Tシャツから作られたとは思えない(28日、名古屋市守山区で)=谷之口昭撮影